こんにちは!
行政書士の越阪部です。
この記事を読んでくれている経営者さんの中でも、
「決算書と試算表を見て利益はちゃんとチェックしているよ!」という方は多いと思います。
ただ、「ウチは利益は出ているはずなのに、いうほど会社にお金が残ってないんだよねー」という方、多いのではないでしょうか。
「黒字なのにお金が減っていく」とか「利益が出ているのにいうほどお金が残っていない」という相談は私のところにもたくさんいただきます。
ではなぜ、「利益が出ているのにお金が残らない」ということが起こりうるのでしょうか。
答えは単純で、「利益と実際のお金の動きは一致していないから」なんです。
海外の会計学の言葉で、「利益は意見、キャッシュは事実」という言葉があります。
まさに言い得て妙で、この言葉の通り、利益とキャッシュの動きは別々のものなんです。
利益というのはあくまでも会計上のルールに従って、会社の儲けを会計っていう共通のルールで表したもので、実態のないものなんです。
それに対してキャッシュの動きは、嘘のつけないリアルな会社のお金の動きなんです。
利益とキャッシュはある程度の連動はしますが、必ずしも一致することにはなりません。だから、本来は利益とキャッシュの動きは別個で考えないといけないんです。
そこで今回は、利益とキャッシュのズレを生む原因について5つ紹介させていただきます。
利益とキャッシュのズレを生む原因5選
売掛金・買掛金
まず一つ目が、売掛金や買掛金といった掛取引です。
たとえば500万円の製品を得意先に掛売で販売したとします。
このときのPL(損益計算書)は、製品を販売しているので、500万円の売上高が計上されます。わかりやすいように原価を無視して考えると、500万円の利益が上がるわけです。
一方でBSはどうなるかというと、BSには500万円の売掛金が計上されます。
このときはまだ現金での回収はできていないので現預金残高は増えず、BSには売掛金という資産が計上されるのみです。
この売掛金が無事に回収できれば売掛金が消えて現金に振り替えられますが、それまでの間は利益が出ているのにお金がないということになってしまいます。
棚卸資産
2つ目は、棚卸資産です。
たとえば材料を現金で仕入れて、仕入れた分がそのまま在庫となっている場合について考えてみましょう。
このときのPLはどうなるかというと、一見、仕入れた分が経費として計上されそうですが、実はそうはなりません。棚卸資産は会計のルール上、在庫として仕入れただけでは経費計上されないんですね。
そのため、PL上には何も影響はなく、利益が減ることもありません。
かたやBSを見てみると、BSでは仕入れた分だけ棚卸資産が計上され、代わりに仕入代金として支払った分の現預金が減ります。
このような場合、利益は減っていないのに現預金だけ減ったということになってしまいます。
固定資産の購入
3つ目は、固定資産の購入です。
たとえば500万円の機械装置を現金で購入した場合を考えてみます。
このときのPLはどうなるかというと、PL上は、500万円全額が購入した期の経費として計上されるかというと、実はそうではありません。
固定資産は何期にもわたって長く使うものなのに対して、その期だけで経費計上してしまうと、その気だけ利益がマイナス数百万円・・みたいなことにもなりかねないので、その企業の正しい利益がわからなくなってしまいます。
そのため、固定資産の場合は減価償却というルールに従って経費計上をすることになっているんです。
例えば、500万円の機械を10年で減価償却する場合、500万円の経費は10分割したうえで10年にわたって経費計上されます。
そのためPL上では、500万円の10分の1、つまり50万円が減価償却費という費用の科目で計上されるわけです。
これに対して現預金は実際に最初に購入したときに減っていますので、BS上の現預金は購入金額分が減って、代わりに機械装置として資産に計上されるわけです。
この場合だと、利益は50万円しか減っていないのに対して、現金は500万円減っているということで、損益とキャッシュのズレが生まれます。
保険の資産計上
4つ目が保険の資産計上です。
保険商品によっては、全額が費用とならずに一部が資産に計上されるものもあります。
たとえば100万円の保険を支払って、そのうち60万円が費用となる商品だったとします。
このときのPLは、費用が60万円なので利益として60万円減ることになります。
これに対しBSの動きがどうなるかというと、100万円を支払ったので現預金が100万円減って、費用に計上していない残りの40万円については、保険積立金として資産計上することになります。
この場合だと、費用として60万円利益が減ったのに対して、実際の現預金は100万円減っているということになります。
銀行への元金返済
最後5つ目が、銀行への元金返済です。
年間500万円の元金を銀行に対して返済していた場合どうなるかを考えてみます。
まずPLですが、実は元金の返済ってPLには何の影響も及ぼさないんですね。
銀行からの借入って、支払利息の分は経費として計上されるんですが、元金返済の部分は経費にはなりません。そのため、元金返済をしてもPLには何の影響もありません。
かたやBSでは、元金返済をした分、負債である借入金の残高が減り、返済の分だけ現預金も減ることになります。
そのため、元金返済が利益よりも多いと、利益は出ていてもそれ以上に返済をしているので黒字でも会社のお金が減るということになってしまいます。
まとめ
ということで、今回は、利益とキャッシュのズレを生む原因5選について紹介させていただきました。
利益ばかりではなく、キャッシュの動きを追うことの大切さが分かっていただけたでしょうか。この記事が少しでも参考になれば幸いです。
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それでは、最後まで見ていただいてありがとうございました。