こんにちは、行政書士の越阪部です。
今回は、「銀行の融資稟議」というテーマを紹介させて頂きます。
先日、とある地銀勤めの方と色々話す機会があり、
融資稟議書の記入項目について教えて貰いました。
稟議書の記入ポイントについては、
どの金融機関でもおおむね同じだと思うので、ぜひご参考になれば幸いです。
融資稟議の流れ
稟議(りんぎ)というのは人によっては聞き慣れない言葉かもしれません。
担当者が融資の可否についての書類を起こし、
それを銀行内で各関係者に回していき、みんなのハンコを集めていく作業ですね。
(よくドラマで見覚えのある方も多いのではないでしょうか。)
銀行での稟議書のルートは以下の通りになります。
①担当者(営業)→②営業役席(課長)→③貸付(融資)担当→④貸付(融資)役席→⑤支店長
大きな金額の案件は、支店長決済ではなく本部決済となるので、
支店長の後に
⑥審査部(本部)担当→⑦審査部(本部)役席
というルートが加わります。
このように、銀行の融資審査では、
多くの承認関門があるので、それぞれをクリアしていかなければいけないんですね。
それぞれの関門で承認されるかどうかを決めるのが、稟議書です。
融資の明暗を分ける、とても大事な書類です。
では、そんな稟議書には何が書かれているのかについて紹介していきます。
稟議書には何を書くのか
稟議書に書く内容はおおむね以下の8点です。
金融機関によっては異なることもあると思いますが、
おおむね以下の8ポイントが融資審査の主要なチェックポイントになります。
①必要金額
担当者が融資の申込金額を妥当と判断した理由が書かれます。
通常は、運転資金であれば計上運転資金(売上債権+棚卸資産-仕入債務)の範囲内であれば適正と判断され、
設備資金であれば見積書等で妥当性が確認されます。
「できるだけ多く借りたい」というのが経営者の思いかもしれませんが、
銀行はそうはいきません。
借りる金額についても、根拠立てて稟議にかけないといけないので、
借入金額は論理的に説明できるかどうかが重要です。
②資金使途
資金使途とは、お金の使い道のことをいいます。
設備資金であれば、どんな設備を購入するのか、
またその設備によりどれくらい利益が出るのかについて説明が必要です。
運転資金であれば、なぜ運転資金が必要になったのか(売上増加に伴う増加運転資金、等)について説明を求められます。
③保全
保全とは、担保や保証人など、いざというときの債権回収の手段のことです。
長期の融資ほど貸し倒れのリスクは上がるため、保全が必要になる場合も多いです。
中小零細企業が融資を受ける際には、信用保証協会の保証付きの場合も多いです。
保証協会の保証付き融資の場合、いざ弁済がなされなくても8割(創業等、一部の例外は全額)を保証協会が代位弁済してくれるので、銀行からすると保証協会が付いているかどうかは非常に大きな要素です。
④返済能力
返済能力とは、文字通り、返済できる財源の根拠のことです。
短期融資であれば売上が返済財源となるので、受注明細等が示せれば返済財源を表す根拠となります。
長期融資であればキャッシュフロー(経常利益-法人税等+減価償却費)が返済財源となるので、資金繰り表等で返済根拠を示すことが重要です。
⑤金利
金融機関の格付け等に応じて金利が設定されます。
格付けの他にも、担保や保証人の有無によっても金利は変わります。
また、貸出期間が長いほど金融機関にとってはリスクも高くなるため、
手形貸付よりも証書貸付の方が金利は高くなります。
⑥期間・種類
融資の種類や貸付期間を記載します。
融資の種類は、証書貸付、手形貸付、手形割引、当座貸越の4種類あります。
当然、期間が長ければ長いほど信用リスクも高くなりますので、
金利や保全等、他の要素との兼ね合いとなります。
⑦融資効果
融資効果については2つの側面があります。
1つ目は、申込企業にとっての効果です。
融資を受けることで将来的にいくらの利益が上がるのか等、
融資を受けることによる金銭的なメリットや今後の展望を記載します。
もう1つの側面は、銀行にとっての効果です。
融資を実行することで、金融機関にとってどのようなメリットがあるのかについても記載します。
⑧担当者の意見
稟議書には、担当者の意見についても記載されます。
どんな例が書かれているのかを尋ねたところ、
- 「要求した資料はすぐに出してくれてちゃんとした会社だ」
- 「社長は係数管理能力が高く、真面目な方だ」
みたいなことが書かれるようです。
こう聞くと、意外と社長自身のことも見られているようですね。
日々の行動の積み重ねが、いざというときの融資を左右する要素になってしまうこともあり得ます。
少しでも有利な稟議書を書いてもらうには
融資の可否を分ける稟議書ですが、
稟議書の出来の良し悪しは、実際に書いてくれる担当者の腕によって大きく変わります。
優秀な担当者であれば、
社長との会話の中から稟議書に書くべきポイントを見つけ出し、
優れた稟議書にまとめ上げてくれるかもしれません。
しかし、そのようなことは中々誰でもできることではありません。
そこで、有利な稟議書を書いてもらうコツをお話します。
それは、「とにかく情報を与える」ということです。
「なんだそんなことか」と思われるかもしれませんが、
「融資審査の成功率は情報量と比例する」とも言われます。
日々忙しい銀行の担当者は、1つの企業のことを徹底的に調べている時間なんてありません。
社長から貰った情報をもとに、稟議書を書いていくしかないのです。
そのため、そもそも情報が少ないと、
中々良い稟議書を書いてもらうのは難しいですよね。
逆に、たくさん情報を与えておけば、
そこからうまくプラス材料を拾って、社内を動かしてくれるかもしれません。
どんな料理人でも、限られた食材で調理するより、
豊富な食材の中から選んで調理した方が絶対に美味しい料理が出来上がります。
それと同じで、担当者には豊富に情報を渡しておいて、
その情報の中から稟議書を書いてもらうことが大切です。
そのためにも、日々の状況報告や事業計画書の共有といったことが大切になってきます。
まとめ
いかがだったでしょうか。
今回は、融資稟議書に記入するポイントについて説明させて頂きました。
融資を受ける際の参考になれば幸いです。
当事務所のメールマガジンでは、経営に役立つ銀行取引についての情報を配信しています。
ぜひお気軽にご登録ください!