こんにちは!
行政書士の越阪部(おさかべ)です。

今回は、目黒区の制度融資について紹介します。

私自身、開業のときにこの制度を使った経験があるので、
経験に基づくリアルな情報をお届けできればと思います。

目黒区の制度融資の特徴

一般的に、創業者は実績がなく、民間の金融機関から直接お金を借りる(プロパー融資)のはハードルが高いです。
そのため、国や地方公共団体が運営している公的融資の制度を使って創業資金を借りることになります。

このときに、公的融資の選択肢の1つとして出てくるのが、制度融資です。
制度融資とは、地方自治体が独自に行っている融資のことです。

目黒区も、創業者向けの独自の制度融資がありますので、
ここからは目黒区の制度融資の特徴について紹介していきます。

融資あっせん制度一覧 目黒区 (city.meguro.tokyo.jp)

融資条件

融資限度額1,000万円以内
年率本人負担0.2%以内(年利1.8%以内でそのうち目黒区が1.6%を補助)
借入期間運転資金7年以内(据置期間1年)
設備資金9年以内(据置期間1年)
利用条件区内に主たる事業所(法人の場合は登記上の本店所在地を含む)を置いて中小企業を創業しようとする事業者(創業後1年未満を含む)を対象とした融資

目黒区の制度融資の最大の特徴としては、何と言っても金融コストが安いことです。
年率1.8%以内のところ、目黒区が1.6%を補助してくれるので、創業者の負担は0.2%以内で済みます。

公的融資のもう一つの選択肢として、「日本政策金融公庫」という国営の金融機関から借りる方法があります。(詳しくはこちら
日本政策金融公庫の融資の場合だと2~3%台の利息が発生するので、それと比べても格段に低金利で済みます。

制度融資を利用する場合、利息とは別に信用保証協会への保証料という費用(通常1%前後)がかかりますが、保証料も1/2は東京都が補助してくれるので、金利と保証料を合わせても1%を切る低コストで借入が可能です。

対象者

次の(1)~(3)のすべての要件を満たし、 AまたはBのいずれかに該当することが要件です。

(1)本融資に係る事業以外には事業(不動産賃貸業を含む)を営んでいないこと
(2)住民税を滞納していないこと
(3)原則として事業に必要な許認可を受けていること

A 融資申込時に事業を営んでおらず、融資希望額と同額以上の自己資金及び具体的計画を有し、個人は2か月以内、法人は3か月以内、特定創業は6か月以内に創業できること(設立登記後1年未満で 事業を開始していない法人を含む)

B 区内に主たる事業所を有し、融資申込時に事業を営んでいるが、事業開始(売上発生等、客観的に事業開始が確認できる日)から1年未満であること。ただし、法人にあっては会社設立登記日から1年未満であること

事業を開始してから1年未満の方が対象となります。
ただ、既に別の事業を営んでいる方(2社目の開業など)は対象外となります。

融資の流れ

次に、融資を受ける際の流れについて解説します。
①から⑨まで、私の場合は丸2ヵ月かかりました。

①金融機関へ相談

まずはお近くの金融機関の窓口に行き、制度融資の相談をしましょう。
創業期の場合、地域密着の信用金庫・信用組合がオススメです。

②目黒区へ相談予約

制度融資を利用するには、目黒区から金融機関へ【融資あっせん書】を発行して貰う必要があり、
そのためには目黒区役所への事前相談をしなければいけません。
相談は完全予約制なので、電話で予約しておきましょう。(03-5722-9880 産業経済・消費生活課 経済・融資係)

③融資あっせん相談

目黒区役所で相談を行います。
創業計画書を持っていき、事業内容について説明できればスムーズに進みます。
事業計画の内容におおむね問題が無ければ、融資あっせん申込書の書き方や申込時に必要な書類について説明を受けることになります。

④融資あっせん申込予約

融資あっせん申込書が完成したら、いよいよ区役所にあっせん申込書を提出します。完全予約制なので、電話での予約が必要です。

⑤融資あっせん申込

融資あっせん申込書を持って、目黒区役所に行きます。
そこで役所の中小企業診断士の方に申込書をチェックして貰い、融資あっせんを正式に申し込むことになります。

⑥融資あっせん書の交付

大体2日くらいであっせん書が交付されます。
あっせん書を貰いに再度目黒区役所に行くことになります。

⑦金融機関へ融資あっせん書の提出&融資申し込み

目黒区から貰った融資あっせん書を金融機関へ提出します。
このときに、金融機関に対して融資の申込を行うことになります。
目黒区へ申し込んだ創業計画書とは別に、金融機関や信用保証協会所定のフォーマットで創業計画書が場合もあります。

⑧信用保証協会との面談

金融機関への融資申し込み後1~2週間くらいで面談が設定されます。
保証協会の担当者が事業所に来てくれるので、その場で行います。
自宅開業の場合は自宅で面談します。

⑨契約&融資実行

金融機関と信用保証協会の審査が通ったら、再度金融機関に行って契約書を締結します。
契約完了後、その日のうちに入金となります。
融資の金額から印紙代や信用保証料を差し引いた金額が入金されます。

申し込みに必要な書類

目黒区の制度融資を利用する際には、以下の書類が必要になります。
目黒区への申込時に必要になるので、用意しておきましょう。

〈法人・個人共通〉

①創業計画書(所定用紙)2部
②敷金・入居保証金等が確認できるもの(賃貸借契約書、重要事項説明書等)
③自己資金が確認できる預金通帳の写し
④売上発生等、客観的に事業開始が確認できるもの(事業開始から1年未満の方のみ)

〈法人〉

⑤履歴事項全部証明書(発行後3か月以内のもの)
⑥連帯保証人の源泉徴収票等
⑦連帯保証人の住民票(個人番号を省略したもの)
⑧事業報告書等の写し

<個人>

⑤申込人の源泉徴収票(2年分)
⑥申込人の住民票(個人番号を省略したもの)
⑦事業開始届(写し)
⑧住民税納税証明書

目黒区の制度融資のメリット・デメリット

創業者が融資を受ける方法としては、以下2つの選択肢があります。

①日本政策金融公庫の融資を受ける
②制度融資を活用する

ここでは、目黒区の制度融資を日本政策金融公庫の融資と比べた時のメリット・デメリットについて紹介していきます。

メリット

①金融コストが安い

日本政策金融公庫で新創業融資を利用する場合、金利は2.28~3.25%です。(2022年10月31日現在)
これに対し、目黒区の制度融資では0.2%とかなり低金利で済みます。

ただ、目黒区の制度融資では、公庫と違い信用保証協会への保証料が発生します。
保証料の相場は1%程度ですが、その1/2は東京都が補助してくれるので、事業者の負担は半分で済みます。

そのため、金利と保証料を合わせても、
金融コストの総額は日本政策金融公庫よりも安く済みます。

②信用金庫・信用組合とのパイプを作れる

制度融資の場合、民間の金融機関からお金を借りることになります。
この際に地元の信用金庫や信用組合と付き合いを作り、関係性を深めておけば、
創業後の資金調達もスムーズに進みます。

特に創業期で売上も数千万円~3億円くらいのうちは、
いきなり都市銀行や第一地銀ではなく、地域の信用金庫・信用組合とお付き合いしておくのがおすすめです。

③創業助成金の応募資格が得られる

東京都で創業する場合、創業者が上限300万円を貰える「創業助成金」があります。
(詳細はこちらの記事をご参照ください。)


創業助成金には応募資格が色々とあり誰でも申し込めるものではありませんが、
応募資格の1つに「制度融資を受けていること」という項目があります。

制度融資を受けておくことで創業助成金の応募要件に該当し、返済不要の300万円を手にするチャンスが得られます。

デメリット

①手続きが煩雑

制度融資のデメリットは、公庫と比べて融資の手続きが煩雑という点です。

制度融資は関連する機関が多いため、
その分手続きや提出する書類も多くなります。

そもそもあっせん書を貰う為に区役所に何度も足を運ばなければいけませんし、
提出する資料も、自治体向け・金融機関向け・保証協会向けと、公庫と比べて多くの書類が必要になります。

②融資実行までに時間がかかる

また、上記と関連して、融資実行までに時間がかかるという点もデメリットです。

公庫の場合、早ければ3週間程度で融資が実行されますが、
制度融資を利用するとどうしても2~3か月かかります。

私の場合、最初に計画書等の書類を全て揃えて準備した上で臨みましたが、
それでも丸2ヵ月かかりました。

融資実行まで待つ時間がない、という方には致命的なデメリットとなります。

③自己資金の制限がある

目黒区の制度融資を利用して事業開始前に融資を受ける場合は、
自己資金の範囲内でしか借入ができません。

例えば自己資金として200万円持っていた場合、
制度融資で借りられるのは200万円までとなります。

公庫の場合はこのような制限はないので(新創業融資制度には1/10の自己資金要件があります)、
事業開始前に融資を受ける場合には要注意です。

なお、ここでいう事業開始というのは、「売上発生」ということになります。
開業届を出すタイミングは関係なく、あくまでも売上発生等で事業実施が確認できるかどうかが重要です。

既に売上が立っており、事業開始している中での融資申し込みであれば、
自己資金要件はなくなりますので問題ありません。

④創業後1年未満でないと使えない

公庫の新創業融資制度は、「創業後税務申告を2期終えるまで」であれば対象となります。

それに対し、目黒区の制度融資は「事業開始後1年未満(法人の場合、会社設立登記日から1年未満)」のみが対象になります。

例えば、2022年10月に事業を開始した事業者は、
2023年11月に創業融資を受けようと思った場合、公庫の新創業融制度は使えますが、
目黒区の制度融資は利用できないことになります。

実際に使ってみた感想

実際に私も開業時に利用してみましたので、使ってみた感想を述べます。

とにかく金融コストが安く融資を受けられるので、そこが一番の魅力です。
金利0.2%、保証料1/2なので、最小限の負担で借り入れを行うことができます。

また、創業融資を受けることで地域の金融機関との繋がりもできるので、その点も良かったです。

逆にネックだったのが、融資を受けるまでに区役所へ3回ほど行ってあっせん書を貰い、
そこから金融機関と信用保証協会からの審査を受けることになるので、日本政策金融公庫と比べるとちょっと面倒でした。

それでも、私の場合融資申し込みから実行までは2か月で済んだので、
比較的スピーディーな方だと思います。(通常、もっと時間がかかる事業者も多いです。)

個人的な意見としては、以下の使い分けが良いかと思います。
さらに言えば、両方活用するのもオススメです。

制度融資がオススメの方

・融資実行までに時間がかかっても待てるという方
・多少手続きが煩雑でも安く済む方が良いという方

日本政策金融公庫の融資がオススメの方

・なるべく早く入金してほしい方
・手間をなるべくかけたくない方
・創業後1年以上経っている方

まとめ

いかがだったでしょうか。今回は、目黒区の創業融資について紹介させて頂きました。
これから目黒区内で開業を考えている方にとっては大変便利な制度ですので、ご参考になれば幸いです。

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私自身、目黒区の制度についてはよく知っていますし、自分自身でも活用しているのでお力になれると思います。

相談では、いくらなら融資が受けられるかの診断や、使えそうな補助金の提案を無料で行っています。
同じ目黒区の事業者としてお力になれれば幸いなので、ぜひお気軽にご相談ください!

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