こんにちは!
行政書士の越阪部です。
今回は、「創業融資の自己資金の範囲」というテーマについて紹介させて頂きます。
創業融資においては自己資金は重要は判断要素になりますが、
いったいどこまでが自己資金として認められるのか、ケースごとに紹介していきますので、
ご参考になれば幸いです。
自己資金とは?
そもそも自己資金とは、創業者が用意した「事業に投資できるお金」のことです。
日本政策金融公庫や制度融資などで創業融資を受ける場合には、
通帳を提示して「自己資金がこれだけあります」ということを証明しなくてはいけません。
自己資金は、創業融資においては、
経験や事業計画書と並んで非常に大事な要素となります。
当然、自己資金が多いほど融資が通る可能性は高くなりますし、借入可能額も多くなります。
というのも、創業融資において自己資金は「創業者の熱意や計画性の表れ」として見られるからです。
創業融資の審査では、通常の融資のように決算書等の実績で評価をすることができないので、
「創業者の資質、熱意、計画性」といった要素も重要な判断材料になります。
「創業者の資質、熱意、計画性」をどこで判断しているのかというと、「自己資金」が見られているのです。
過去半年分くらいの通帳を見た時に、開業に向けて毎月コツコツと貯金をしていれば、
「この人は計画性がある」、「本気で創業したいんだな」というように思われます。
逆に自己資金が全くなければ、
「単なる思い付きで創業したのではないか」、「計画性が無いのではないか」と思われてしまいます。
このように自己資金は非常に大事な要素になりますが、
一般的に、「創業に必要な資金総額の3分の1」程度あれば良いと言われています。
たとえば日本政策金融公庫の「新創業融資制度」の場合、
制度上の自己資金要件は10分の1ですが、それはあくまでも申込み上の制限であって、
実際は3分の1以上あるのが望ましいです。
自己資金として認められる範囲はどこまで?
それでは、以下の具体的なケースごとに、
自己資金として認められるものと認められないものを考えてみます。
①預金
②配偶者名義の通帳にある預金
③親や親戚から援助して貰ったお金
④株式などの資産
⑤退職金
⑥現金の貯金
⑦他人や他の金融機関から借りたお金
⑧保険の解約返戻金
⑨現物出資
①預金
当然、預金は自己資金となります。
自己資金は、通帳などで客観的に確認できるものでないといけませんので、
預金口座等に預けておくのがベターです。
注意すべきなのが、お金の貯め方もチェックされているという点です。
例えば、これまで預金残高は少なかったのに、
ある一定時点で急に大きな入金があった場合などは、その出元を必ず聞かれます。
例えばこのときに、「別の貯金用口座から移した」と言った場合、
「ではその口座も見せてください」と言われます。
金融機関はいわゆる「見せ金」を嫌う為、
お金の貯めた経緯はしっかりと説明しなければいけません。
②配偶者名義の通帳にある預金
妻や夫の通帳にある預金も、自己資金として認められるケースが多いです。
同一世帯であれば、夫婦でお金を分けずに、
貯めたお金をどちらか一方の通帳で管理していることも珍しくありません。
そういった場合は、配偶者の通帳であっても、
ちゃんと自分でお金を貯めてきた経緯を示すことができれば、何ら問題はありません。
③親や配偶者、親戚から援助してもらったお金
家族や知人友人から援助してもらったお金は、
「貰った場合」と「借りた場合」によって評価が分かれます。
貰った場合
問題なく自己資金として認められます。
場合によっては家族の同意や贈与の契約書が必要になることもあります。
なお、貰ったお金でも自己資金と認められるものの、
「自分でコツコツと貯めたお金」よりは評価は低くなります。
「自分でコツコツと貯めたお金」は「計画性や熱意の表れ」として評価されますが、
「貰ったお金」ではそのあたりのプラス材料にはなりにくいです。
借りた場合
借りたお金の場合は、原則として自己資金にはなりません。
返済義務があるお金なので、負債と扱われるためですね。
なお、例外として、仮に借りたお金であっても、
「親から期限無しで借りて、いつか事業が成功したら返す」といった場合であれば、
「資本性がある」と判断されて、自己資金とみなしてくれることもあります。
④株式などの資産
株式や投資信託などの資産は、原則として自己資金とは認められません。
ただし、資産を売却してお金に変えれば、もちろん自己資金として扱われます。
場合によっては、上場株式のように客観的に評価が可能な有価証券であれば、
一定の掛目を乗じて自己資金として扱ってくれるケースもあるかもしれませんが、
原則としては換金しない限り自己資金とはなりません。
⑤退職金
退職金も自己資金となります。
融資申し込み時点でまだ受け取っていなくても、
退職金を証明する書類があれば、自己資金としてみなしてもらうこともできます。
⑥現金の貯金
現金での貯金(いわゆるタンス預金)は自己資金になりません。
現金だと集めた経緯が分からないので、
「融資審査に通るために一時的に調達したお金なのでは?」と疑われてしまいます。
仮に本当に自分で貯めたお金だとしても、
現金だとそれを証明するのは難しいので、貯金は預金口座に集めておくようにしてください。
なお、現金で貯金をして、
それを融資申し込み直前に預金口座に預け入れたとしても、やはり厳しいです。
この場合には、預け入れたお金をどうやって調達したのかを聞かれることになり、
その際に「現金で貯めた」となると、自分で貯めたことの証明ができないので、自己資金とは認めて貰えません。
⑦他の金融機関から借りたお金
当然ですが、他の金融機関・ノンバンク等で借りたお金は自己資金とはなりません。
⑧保険の解約返戻金
保険の解約返戻金については、
書面で証明できれば自己資金としてみなしてくれるケースもあります。
この場合、実際に保険を解約して返戻金を貰う必要はありません。
⑨現物出資
現物出資についても、自己資金として見て貰うことは可能です。
その場合には、事業に必要な資産であることはもちろん、客観的な価格の妥当性などを示す必要があります。
まとめ
いかがだったでしょうか。
今回は、「創業融資の自己資金の範囲」について紹介させて頂きました。
自己資金は、融資を受けるうえで非常に大事なポイントですので、
しっかり準備してから臨みましょう。
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