こんにちは!
行政書士の越阪部です。

今回は、金融機関は中小企業の貸借対照表(BS)をどのように見ているかという点について紹介していきます。

この見方が分かれば、自社のBSがどのように評価されているのかが掴めますので、ご参考になれば幸いです。

BSについて詳しく知りたい方は、こちらの記事をご参照ください。

表面ではなく中身を見る

決算書の分析というと、BSのそれぞれの数字を見比べて、計算して、〇〇比率を出して・・・ということをしていると思われがちですが、実は、中小企業の決算書でやみくもに比率分析をしてもあまり意味が無いんです。

多くの中小企業のBSでは、(悪意がなくても)実態とは異なる数字が計上されていることが少なくありません。
実態と異なるBSでは、いくら財務指標の計算をしたところで、元の数字が実態とそぐわないので意味が無いですよね。

そこで金融機関は、中小企業のBSを深く見ていき、実態の数字はどうなのかという点をチェックします。

具体的には、

  • 資産の部に計上されている資産は本当にあるのか
  • 資産の価値はBSの数字どおりあるのか
  • BSに載っていない負債はないのか

といったことを調べ、表面上のBSの数字ではなく、実態のBSをもって評価します。

ここでは、それぞれの勘定科目ごとに、どういった点がチェックされているのかを説明していきます。

流動資産のチェックポイント

BSの資産の部は、流動資産と固定資産に分かれます。
まずは流動資産について解説していきます。

現金・預金

現金は、本当にその金額が現金としてあるのかどうかがチェックされます。
明らかに現実的ではない金額が計上されている場合は確認されます。

預金の場合、通帳で確認できるので実態と異なる数字が計上されていることは少ないですが、例えば預金を担保に入れて自由に引き出せないときのように、もはや資金繰りに使えないケースもあるので、きちんと自由に使えるお金かどうかをチェックされます。

売掛金

売掛金は、

  • 本当に存在する売掛金か
  • 本当に回収できるか

について確認されます。
売掛金は粉飾によく使われますので、勘定科目の明細を見て実態を確認されます。

売掛金が要注意なワケ

例えば、売掛金をでっち上げて架空の売上を作れば、
原価はかからないのでその分が利益となります。
このようにして利益操作をしている例もあるので、金融機関は慎重にみています。

具体的なチェックポイントとしては、以下のようなことを確認されます。

  • 売掛金の残高は適切か
  • 焦げ付いている売掛金が無いか

例えば「月末締め翌月末払い」で取引している会社があったとします。
月初に売ったら売掛期間は2ヶ月、月末に売ったら売掛期間は1ヶ月となるので、
この会社の平均の売掛期間は1.5ヵ月です。

これに対し、売掛金が平均月商の3ヶ月・4ヶ月分もあったら、
架空の売掛金や、回収不能の売掛金が疑われます。

受取手形

受取手形の場合、現物があるため売掛金よりかはごまかしがききませんが、
それでも不渡りとなる手形が無いかどうかはチェックされます。

また、通常の取引の流れとは異なる会社や同業者から振り出された手形は、融通手形の可能性も疑われます。
もちろん融通手形には資産価値はなく、金融機関からの評価も大きく下がります。

有価証券

有価証券がある場合は、時価で再計算され、含み損や含み益が無いかを評価されます。

棚卸資産

棚卸資産(在庫)は、

  • 意図的に在庫を増やしていないか
  • 不良在庫が混ざっていないか

という点を主にチェックされます。
在庫を多く計上すれば、その分利益が増えることになるので、
粉飾等に使われないよう細かくチェックが必要です。

とはいえ、倉庫に行って実地を確認するのは難しいので、
棚卸資産の回転期間を算出し、前期と比べて増減が不自然でないかを確認します。

雑勘定

上記以外のその他流動資産は、雑勘定とも言われます。
雑勘定には、資産性がなく不明瞭な取引が隠れていることも多いです。

そのため、金融機関からは0評価となる科目も多いので注意してください。
具体的には、以下のような項目が挙げられます。

  • 前渡金
  • 前払費用
  • 仮払金
  • 貸付金
  • 未収入金
  • 立替金

この辺りの勘定科目は、本来は費用とされるものが雑勘定として資産計上されているケースも多く、印象が良くないです。さらに、融通手形をはじめ不適切なお金の流れをごまかすためにも使われがちな勘定科目なので、金融機関は嫌います。

また、貸付金については中小企業の場合は回収のあてがないことが大半です。

社長が会社の金を勝手に引き出して使ったり、利益操作のために焦げ付いた売上債権を貸付金に振り替えたり、別法人や関係会社にお金を渡していたりするケースもあるので、金融機関はほぼ0の評価をすることになります。

特に貸付金については、金融機関からすると資金使途違反(融資した目的と違うことにお金が使われる)となり、とても嫌います。資金使途違反は銀行にとってもタブーですので、絶対にしないようにしてください。

まとめ

いかがだったでしょうか。
今回は、BSの勘定科目のチェックポイントについて、流動資産に絞ってお伝えさせて頂きました。
中小企業の財務分析では、各勘定科目の内容を細かく追っていくことが重要です。

表面ではなく、実態のBSを確認するようにしましょう。

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