こんにちは!
行政書士の越阪部です。

今回は、「金融機関が貸借対照表(BS)を見る上でココを見ている」というポイントについて紹介していきます。

前回の記事で流動資産について紹介させて頂きましたので、
今回の記事では固定資産について触れていこうと思います。

表面ではなく実態を見る

中小企業のBSでは、表面の数字ではなく実態の数字を見ることが大切です。
たとえ悪意がなくても、中小企業のBSには実態と異なる数字が計上されていることが少なくありません。

例えば、

  • 資産性の無いものが資産として計上されていたり
  • 帳簿上の価格と実態の価格が異なっていたり
  • 本来計上されるべき負債が記載されていなかったり

ということが少なくありません。

もちろん悪意で意図的にごまかしている(粉飾)ケースもありますが、
悪意が無くてもこのようなことは起こり得ます。

そのため、金融機関は、中小企業の決算書を表面上の数字のまま受け取るようなことはしません。
実態に基づいて修正を行い、修正後の数字を基に評価されます。

自社のBSを分析するときも同様です。
実態とそぐわない表面上の数字だけを並べて、〇〇比率は何パーセントで・・・みたいなことをやってもあまり意味がありません。

ここでは、それぞれの勘定科目がどのように見られているか/どのようにチェックすべきかについて紹介していきます。前回の流動資産編に続いて、今回は固定資産についてです。

固定資産のチェックポイント

建物

建物の場合は、減価償却不足がないかどうかをチェックされます。
減価償却不足があれば、本来減価償却した場合の金額に修正され、その分利益も減って修正されます。

減価償却をするとその分費用が増して利益が下がるので、
中には意図的にやらずに利益を良く見せている会社もあります。

こういった会社でも、税務署は何も指摘しません。
(減価償却をせず利益が増える分には、税収が上がって税務署としてはプラスだからですね。)

しかし、金融機関は実態の数字で評価を行いますので、
原価償却を行わずに利益を作った場合であってもすぐに見抜かれてしまいます。

土地

土地はBS上には取得原価が記載されていますので、含み損や含み益があるかもしれません。
そのため、現在の価格(時価)に引き直して評価されます。

簡易的には、路線価や公示地価を使用して時価で再計算されます。
簿価よりも時価が高ければ、含み益があるのでプラス評価になりますが、
簿価よりも時価が安ければ、その分は含み損としてマイナスの修正が行われます。

ちなみに、バブル期に取得した土地は多額の含み損を抱えている場合が多いです。

その他の有形固定資産(機械、工具、器具、備品)

土地や建物以外の有形固定資産は償却資産と呼ばれます。
これらの資産も、建物と同様、きちんと減価償却されているかどうかが確認されます。

無形固定資産

電話加入権やソフトウェアが無形固定資産の例です。
一般的に、電話加入権は大した額ではないですが、0評価となる場合が多いです。

ソフトウェアについても、明確に価値が説明できるものを除き、マイナスの調整が行われます。

投資有価証券

流動資産の有価証券は市場性のある株式等でしたが、
固定資産の投資有価証券は関連会社の株式や取引先の株式など、評価が難しいです。

その会社が債務超過でなく、財務基盤も健全な場合は額面通りに評価されることもありますが、
そうでなければ資産性が無いとみなされ0評価となります。

長期貸付金

長期貸付金は、定期的に返済されており、完済が見込めそうであれば額面通り評価されます。
しかし、中小企業の貸付金は、社長個人に流れていたり、関連会社に流れていたりで、返済が見込めないものが多いです。このようなケースでは、金融機関からの評価は0になります。

繰延資産

繰延資産とは、創業費や開発費、社債発行費等、一度に発生する多額の費用に対して、
「いったんは資産計上しておいて、徐々に費用計上しても良い」と会社法や税法上認められたものをいいます。

本来的には資産性・換金性は全くなく、費用の繰延でしかないので、原則0評価で修正が行われます。

まとめ

いかがだったでしょうか。
今回は、BSのチェックポイント(固定資産編)について紹介させていただきました。

中小企業のBSは、表面の数字を使ってあれこれ比率分析をしていてもあまり意味がありません。

それよりも、勘定科目内訳明細書をチェックして深く実態を見ていくことが大切です。
ぜひ参考になれば幸いです。

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