こんにちは、行政書士の越阪部です。
今回は、財務指標について紹介していきます。

財務指標とは?

「財務指標」とは、企業の経営状況や業績を分析・把握するために用いられる指標です。
貸借対照表(B/S)や損益計算書(P/L)といった財務諸表の数値から算出されます。

財務指標を使えば、会社の経営状況を数字として客観的に表すことができます。
そのため、経営目標の設定や、金融機関など第三者からの評価の際に活用されます。

代表的な財務指標

財務指標には、
安全性、収益性、効率性など、注目したいポイントごとに適した指標があります。

(1)安全性を見る指標
(2)収益性を見る指標
(3)効率性を見る指標

(1)安全性を見る指標

安全性とは、その会社の経営が今後も継続的にできるかどうかを表します。
早い話、潰れやすいか潰れにくいかを表しているものです。

①流動比率

流動比率とは、流動負債に対して流動資産がどのくらいあるかを示した指標です。

流動比率=流動資産/流動負債×100

※なお、流動資産と流動負債については以下の通りです。

流動資産:1年以内に現金化される資産
流動負債:1年以内に支払期限が到来する負債

流動比率は、短期的な支払い能力を見る指標です。
流動比率が100%を上回っていれば、流動負債を流動資産から返済することができるので安全性は高いと言えます。
逆に100%を下回っていると、短期の支払い能力に問題がある可能性が高いです。

②当座比率

当座比率とは、流動負債に対して当座資産がどれくらいあるかを示した指標です。

当座比率=当座資産/流動負債×100

当座資産とは、流動資産から棚卸資産を引いたものを言います。
棚卸資産は実際に現金化できるかどうかが確実ではないので、
より厳しく見るために流動資産から棚卸資産を控除したものが当座資産です。

流動比率よりももっと厳しくチェックする際に使われる指標です。

③固定比率

固定比率とは、固定資産への投資が自己資本でどの程度賄われているかを示した指標です。

固定比率=固定資産/自己資本×100

理想論でいえば、固定資産への投資を全て自己資本で賄うことができれば望ましいです。

しかし、日本の中小企業ではそんな会社は殆どないはずです。
多くの会社が長期借入金で固定資産を調達している為、実務上では次の「固定長期適合率」の方が使われます。

④固定長期適合率

固定長期適合率とは、固定資産への投資が「自己資本+固定負債」でどれだけ賄われているのかを示した指標です。

固定比率=固定資産/(自己資本+固定負債)×100

固定比率では分母が自己資本だけだったのに対し、
固定長期適合率では分母が(自己資本+固定負債)となっています。

目安として固定長期適合率が100%を下回っていれば、
固定資産への投資を自己資本と固定負債で賄っていることになるので、
資金調達の面からは安全性は高いと判断できます。

⑤自己資本比率

自己資本比率とは、総資産に対して自己資本がどれくらいあるかを示した指標です。

自己資本比率=自己資本/総資産×100

自己資本比率が高ければ、
返済不要の資金よって事業資金の多くが賄われていることになり、安全性が高いと言えます。

目安としては30%が安全、と言われることが多いですが、
実際問題、中小企業で自己資本比率が30%もある会社は少ないです。

⑥負債比率

負債比率とは、負債が自己資本の何倍あるかを表した指標です。

負債比率=負債/自己資本×100

自己資本比率と同様に、企業の財務体質の強弱を判断する指標です。
負債比率は分母が総資産ではなく自己資本ですので、自己資本に対しどれくらい負債があるかを示しています。

(2)収益性を見る指標

収益性とは、企業がいかに効率よく利益を上げているかを示す指標です。
簡単に言うと、「稼ぐ能力」があるかどうかが分かります。

⑦売上総利益率

売上総利益率とは、売上高に占める売上総利益の割合です。
売上総利益とは、売上から原価を引いた利益のことで、粗利とも呼ばれます。

売上総利益/売上高×100

⑧売上高営業利益率

売上高営業利益率とは、売上高に占める営業利益の割合です。
営業利益とは、粗利から販売費および一般管理費を引いた利益のことです。

営業利益/売上高×100

売上高営業利益率を見ることで、
その会社が本業でどのくらい稼げているかを把握することができます。

⑨売上高経常利益率

売上高経常利益率とは、売上高に占める経常利益の割合です。
経常利益とは、営業利益から営業外収益・費用を足し引きした利益のことです。

経常利益/売上高×100

⑩総資本経常利益率(ROA)

総資本経常利益率(ROA)とは、
事業に投下した資本(総資本)からどれだけの利益が生まれたかを示す指標です。

総資本経常利益率=経常利益/総資本×100

ここでいう総資本とは負債と純資産の合計額(=資産総額)のことです。
ROAは企業の総合的な収益性を判断する指標と言われ、高いほど収益性が高いと判断されます。

(3)効率性を見る指標

効率性とは、経営資源をどれだけ効率的に売上を生むために使っているかを示す指標です。

⑪売上債権回転率

売上債権回転率とは、売上債権を回収する速さを表す指標です。

売上債権回転率(回)=年間売上高/売上債権

回転数が多いほど、売上債権が回収されて現金化されるサイクルが早いということになり、資金繰りの観点からは望ましいです。

⑫売上債権回転期間

売上債権回転率と似ていますが、ちょっと見方を変えて、「売上債権が平均月商に対してどれくらいあるか」を示した指標が「売上債権回転期間」です。実務上は、この指標の方が感覚的に分かりやすいと思います。

売上債権回転期間(ヵ月)=売上債権/平均月商

⑬棚卸資産回転率

棚卸資産回転率とは、1年間の売上高が棚卸資産の何倍あるかを示した指標です。

棚卸資産回転率(回)=年間売上高/棚卸資産

⑭棚卸資産回転期間

棚卸資産の残高が平均月商の何か月分あるかを示した指標を「棚卸資産回転期間」といいます。

棚卸資産回転期間(ヵ月)=棚卸資産/平均月商

⑮仕入債務回転率

仕入債務回転率とは、支払債務(買掛金、支払手形)の支払いの速さを示す指標です。

仕入債務回転率(回)=売上原価/仕入債務

回転率が低いほど支払いタイミングが遅いことを示すので、資金繰り面で望ましいです。

⑯仕入債務回転期間

仕入債務が月平均の売上原価と比べて何カ月分あるかを示した指標を「仕入債務回転期間」といいます。
売上債権回転期間よりも仕入債務回転期間の方が短い場合、資金繰りが厳しくなります。

仕入債務回転期間(ヵ月)=仕入れ債務/1か月あたりの売上原価

まとめ

いかがだったでしょうか。
今日は主要な財務指標について16種類を紹介させて頂きました。

財務指標を知っておくと、経営改善のための数値目標として活用できるばかりではなく、
銀行員との会話でも役に立ちますので、主要なものは抑えておくと良いです。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

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